遊牧民の絨毯

無題ドキュメント
遊牧民の絨毯
ROGOBA COLLECTION

ウールを梳く少女の写真 ウールを梳く少女の写真






“遊牧民” と “絨毯”


ギャッベ写真1


そもそも遊牧民とは、牧畜を生業とする人々のことを指しています。
また牧畜とは、牛や羊、鶏や兎などの家畜を飼育して数を増やし、その乳や肉、それらの加工保存食、皮革や羊毛など家畜の身体に起因するモノを主たる生活の糧とする生業を指します。
そして、その中でも、特定の居住地を定めずに季節や天候に応じて家畜を引き連れて移動する牧畜生活を “遊牧” と言います。

古来より牧畜社会は、人口密度の低い山岳部や半砂漠地帯、大草原地帯など農耕では食糧需要を満たせない場所で盛んに営まれてきました。

つまり遊牧民とは、定住と移動を繰り返し、居住する場所を一年を通じて何度も変えながら、牧畜を行って生活をしている人たちのことを言うのです。 多くの場合、一家族ないし数家族からなる小規模な単位(拡大家族)で家畜の群れを率い、家畜が牧草地の草を食べ尽くさないようにしながら、その回復を待つ意味でも、定期的に別の場所へと移動を行っているのです。
一般的に、遊牧民は定住型の人々からは、当て所なく移動しているかのようなイメージを抱かれがちですが、実際には、拡大家族ごとに固有の夏営地、冬営地などの定期的に訪れる占有的牧地をもっているのが普通で、その年の気候の変動や家畜の状況にあわせながら夏営地と冬営地をある程度定まったルートで巡回しています。

また、遊牧民のもうひとつの特徴は、生活のためには交易活動が欠かせないと言うことです。そもそも遊牧生活では、ミルク、毛皮、肉などを入手することは容易なのですが、穀類や、定住を必要とする高度な工芸品を安定的に生産することは困難です。
そのため、多くの場合、遊牧民の牧地の近辺には定住民、特に農耕民の居住が不可欠です。古来より遊牧民は移動性を生かして、岩塩や毛皮、遠方の定住地から遊牧民の間を伝わって送られてきた遠隔地交易品などを、隊商を組んで運び、定住民との交易を行って、生活必需品を獲得してきました。
このように、一見素朴な自給自足生活を送っているような印象を受けがちな遊牧民も、山羊や羊、牛や馬といった商品性の高い家畜を売買することで生活しているのです。


テントの中で絨毯を織る風景の写真 テントの中で絨毯を織る風景の写真

以上のように、遊牧民は限られた月日・時間しか1箇所にとどまっていません。そのため遊牧民の女性たちは、限られた時間の中、テントの中などで織り機を組み立てキリムや絨毯を織り上げなければならないと言う制約を持っています。
そしてまた、全ての遊牧民の女性がキリムや絨毯を織っていたと言うわけではなく、あくまでも織りの好きな女性が織っていたと言えます。
そのため、元来 ”遊牧民の絨毯“ は、定住民が工房で時間をかけ織り上げる『ペルシャ絨毯(イラン)』や『ヘレケ絨毯(トルコ)』のように他人との交易を目的として作成されるような精緻なものではなく、自分たち家族の利用のために織る素朴なモノが本来の姿なのです。
つまり、”遊牧民の絨毯“は、織り手自身のその時々の気分や好みを自由に表現したとても大らかなモノだと言えます。

ロゴバは、このような点に、より素朴なキリムと同様の魅力を ”遊牧民の絨毯“ にも感じています。

以上のように、遊牧民は限られた月日・時間しか1箇所にとどまっていません。そのため遊牧民の女性たちは、限られた時間の中、テントの中などで織り機を組み立てキリムや絨毯を織り上げなければならないと言う制約を持っています。
そしてまた、全ての遊牧民の女性がキリムや絨毯を織っていたと言うわけではなく、あくまでも織りの好きな女性が織っていたと言えます。
そのため、元来 ”遊牧民の絨毯“ は、定住民が工房で時間をかけ織り上げる『ペルシャ絨毯(イラン)』や『ヘレケ絨毯(トルコ)』のように他人との交易を目的として作成されるような精緻なものではなく、自分たち家族の利用のために織る素朴なモノが本来の姿なのです。
つまり、”遊牧民の絨毯“は、織り手自身のその時々の気分や好みを自由に表現したとても大らかなモノだと言えます。

ロゴバは、このような点に、より素朴なキリムと同様の魅力を ”遊牧民の絨毯“ にも感じています。




 

GABBEH(ギャッべ) ー ロゴバ・コレクション


ギャッべの写真1
ギャッべの写真1




【 ギャッベとは 】

ギャッベを水平機で織る風景の写真


「ギャッベ」とは、ペルシャのザクロス山脈やその付近に住む遊牧民のガシュガイ族やルリ族などによって古くから織られてきた遊牧民の手織り絨毯の総称です。
それらは現在も母から娘へと代々受け継がれている伝統的な織物ではありますが、現在では、遊牧生活をしながら絨毯(ギャッベ)を織ることはほとんどなく、織り手は定住しながらギャッベを織っているのが実情です。



ギャッベ写真1


ところで、かつてカシュガイ族の織り上げたキリムやギャッベの多くは、現在のファールス州の州都であるシーラーズの市場に集められていました。
しかしながら当時、ペルシャ語の「ギャッベ」と言う言葉は、織り目が粗く毛足が長くて重い絨毯のことを意味し、『ざっくりとした』または『garbage=ゴミ』というような意味が込められていました。
つまり、精緻なペルシャ絨毯が好まれていたイランでは、絨毯には高度な織り手の技術や繊細さが求められ、洗練されたデザインが好まれていました。そして、ペルシャ絨毯はその精緻なデザインや色彩の美しさにこそ価値があるとされ、世界中で、富の象徴としてそれらを所有することが、その人の社会的地位の高さを表現することになるとまで考えられていました。
そのような時代にあって、非常に粗くて厚い形状の素朴な「ギャッベ」は、精美なペルシャ絨毯に比べ、まるで『ギャッベ=ゴミ』のように思われたのでしょう。 しかし時代が変わり、機械化・デジタル化・均質化が進んだ現在では、以前とは逆に多くの人々が心の豊かさを求め、個性や温かみのあるナチュラルな美を求めるようになりました。素朴な動物や風景など、織り手の生活に基づくモチーフで構成されたギャッベは、その一枚一枚に織り手の思いや温かみが感じられ、その素朴でユニークなデザインゆえに、多くの人々に愛されるようになっています。



ギャッベの風景写真1 ギャッベの風景写真1 ギャッベの風景写真2


【 ロゴバのギャッベ・コレクションとは 】

ロゴバの視点でコレクションしたギャッベは、全て、ほぼ30年前の数年間にゾランヴァリ ”ZOLLANVARI” の家族* から直接ロゴバが購入し、現在まで保管していたものです。それらは当時の優れた織り手によって織り上げられた上質なギャッベで、一枚一枚が現在のゾランヴァリのモダンな展開に繋がる独自の個性を持った逸品です。
*当時、国立民族学博物館 教授で、イスラム文化・絨毯研究の第一人者であった杉村棟 氏のご紹介


ギャッベを水平機で織る風景の写真


ギャッベ・コレクションの中には織り手のサインが織り込まれたものも多く、それらからは、織り手が時間をかけ心を込め織り上げた作品(ギャッベ)への愛情や自信が感じられます。


ソマックイラスト1ソマックイラスト1ソマックイラスト1
ギャッベ織り手のサインの写真1ギャッベ織り手のサインの写真2ギャッベ織り手のサインの写真3


ロゴバは、特にギャッベの中でも小さなサイズをコレクションしています。 その理由は、ロゴバが『インテリアを楽しみたい!』という気持ちを大切にているからです。
一般に大きな絨毯は収納場所に困ります。インテリアを楽しむために最も大切なことは「四季折々に模様替えができる」ということです。中でも、床の風景(素材)を簡単に変えられることはインテリアを楽しむ上で特に重要で、敷物の有る無しで、お部屋の雰囲気は全く変わります。そのためにも、ロゴバは収納が簡単な小さなサイズの絨毯をコレクションし、お部屋のアクセントとして簡単に移動できるサイズで、アーティスチックなギャッベをコレクションするように心がけました。
つまり、小さなギャッベ(敷物)は、季節や気分に応じた使い分けが可能で、『インテリアを楽しむには最適なアイテム』とロゴバは考えています。
そして、小さなサイズの敷物は、空間のアクセントとして模様や色の選定がある程度自由で、その時々のインテリアに合わせやすく、気軽に雰囲気を変えて楽しむことができると私たちは考えています。



【 ギャッベ(遊牧民の絨毯)とインテリア 】

1. 温かみのある雰囲気を演出
自然素材であるウールと温かみのある色合いが、空間に温もりを与えます。

2. 個性的なアクセントとして
シンプルな家具やモダンなインテリアにギャッベを取り入れることで、空間に個性的なアクセントを加えることができます。

3. 人々が継承した文化を味わう
手織りの技術や伝統が反映されたデザインは、インテリアに文化的な深みを与え、訪れた人々になごみを与えます。

4. 多様なスタイルとの調和
特に小さなサイズは、カジュアルな部屋からフォーマルな空間まで、さまざまなスタイルに合わせて幅広くコーディネートすることができます。



【 ゾランヴァリ 】

ギャッベ は、2,000年以上にわたり、遊牧民が生活の中で生み出し伝え続けてきた織りの文化をもつ絨毯で、主にイランの南西部で作られているものです。
しかしギャッベは、イラン国内では長らくゴミのように扱われてきました。
そうした中 ゾランヴァリは、1970年頃、織り手の個性やアート性がギャッベにあることを見抜き、遊牧民から定期的に買付を行いながら、遊牧民にギャッベの品質管理のアドバイスを行い続けました。
その結果現在では、ゾランヴァリのギャッベは上質なギャッベとして欧米を中心に世界中へ広まりました。
つまりゾランヴァリは、ゴミ扱いされていたギャッベを上質なギャッベに育て上げ、世界的なブランドに育て上げた絨毯商なのです。




 

TULU(トゥル) ー ロゴバ・コレクション


トゥルの写真1
トゥルの写真1


【 トゥルとは 】

「トゥル(TULU)」とは、古くからトルコの遊牧民(テュルク)が自分たちの生活のために織っていた素朴な手織りの絨毯です。
トゥルは、平織りの経糸(たていと)に糸を結びつけてパイル(毛足)を作り出す手法で、あまり嵩張らず平坦になるよう、経糸に緯糸を数段通してからパイルを結びつけて織っているのが一般的です。
パイルの風合い、長さ、柄ゆきなどは千差万別で、遊牧民自身が日常使いしていたこともあり、文様はいたってシンプルで素朴です。がしかし、大自然の中で生活していたため、トゥルには大らかで自由さが感じられ、織りを楽しんでいるように思われる作品が多く見受けられます。

ところで、トルコでは既に遊牧民が存在しなくなっています。そのため、地元トルコをはじめ欧米では、トゥルはレアなコレクターの間で根強い人気を博しており、良質でユニークなトゥルは評価が高くとても貴重なものとして取引されています。




 

Modern TULU(モダン・トゥル) ー ロゴバ・コレクション


モダン・トゥルの写真1
トゥルの写真1


【 モダン・トゥルとは 】

1995年頃からの約10年間、トルコでは、かつての遊牧民の女性たちのようにコマを回し素朴な手紡ぎのウールを作れる人がほとんどいなくなったため、ダメージのあるアンティークやオールドキリムをトルコ中から集め、そのウールを解いて、風合いのある草木染めの絨毯(トゥル)を織るプロジェクトが、トルコのバルケシル地方に定住する遊牧民の伝統を引き継ぐ子孫たちの間で起こりました。
→ モダン・トゥル
当時、ロゴバはこの活動を現地で支持し全面的に協力いたしました。(下の写真は、当時の作業風景)
その活動で織り上がった絨毯は、正しくかつてトルコの遊牧民が織り上げたTULUの文化を引き継ぎ、現代センスを加えたモダンなTULUで、現在では、入手困難と言えるユニークな逸品です。

このプロジェクトは約10年で終了しましたが、今から考えると、いわゆる【SDGs】でありエコ活動であったと思われます。


ギャッベを水平機で織る風景の写真
ギャッベを水平機で織る風景の写真 ギャッベを水平機で織る風景の写真
ギャッベを水平機で織る風景の写真 ギャッベを水平機で織る風景の写真
ギャッベを水平機で織る風景の写真



 

宗教・宗派の違いによる文様の変化

中近東で暮らす遊牧民は、世界三大宗教の一つ イスラム教を信仰していますが、そのイスラム教は、大きくシーア派とスンニ派の二派に大別することができます。 そして、遊牧民が絨毯に描く文様は、部族による違いもありますが、彼らが属する宗派によって、かなり大きな違いがあります。
つまり、イランの遊牧民はシーア派に属し、絨毯に描く文様は実物に近い写実的な絵柄が多く、一方のトルコの遊牧民はスンニ派に属し、描く文様はより単純化・抽象化させる傾向があります。
また、イランはかつて偉大なペルシャ帝国で、その宗教がゾロアスター教(拝火教)であったため、イランのイスラム教には少なからずその影響が残っているようにも思えます。